生成AIのリスク一覧は自作しない|AI事業者ガイドラインの分類をそのまま使う

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「生成AIのリスクを社内向けにまとめておいて」と急に頼まれて、何から手をつければいいか分からず固まっていませんか。ゼロから自分の言葉でリスク一覧を作ろうとすると、抜け漏れが心配になったり、あとで上司や法務部門から「その分類の根拠はどこにあるの」と聞かれて答えに詰まったりします。

結論から言うと、リスク一覧は自分で作らなくていいのです。総務省と経済産業省が共同で公表している「AI事業者ガイドライン」に、リスクと対応の考え方がすでに10項目の指針として整理されています。社内で説明するときは、この10項目のうち「AI利用者」向けの部分だけを抜き出せば足ります。

この記事で分かること(結論の先出し)

使う資料 社内説明での使い方
AI事業者ガイドライン(第1.2版・総務省/経済産業省) 「共通の指針」10項目をそのまま分類として使う
同ガイドライン 表1「AI利用者」向け事項 10項目の中から社内説明に必要な部分だけ抜き出す

この記事では受験対策や研修資料の作り方は扱いません。研修に配る資料が欲しい場合は公的な教材のまとめ記事、社内ルールのひな形が欲しい場合は社内AI利用ルールの記事を参照してください。

その公的資料はどれか(AI事業者ガイドラインとは)

AI事業者ガイドラインとは、総務省と経済産業省が共同で策定・公表している、AIに関わる事業者向けの指針です。現行版は第1.2版(令和8年〈2026年〉3月31日公表)で、2026年8月31日時点でこれより新しい版は確認できていません。策定から複数回の改訂を経ており、社内で説明する際は「今の版がどれか」を先に押さえておくと、後から古い情報だったと指摘されずに済みます。

版の履歴(社内説明でそのまま使える一覧)

公表日
第1.0版 2024-04-19
第1.01版 2024-11-22
第1.1版 2025-03-28
第1.2版(現行) 2026-03-31

ガイドラインは大きく「本編」と「別添」の2つで構成されています。本編がAIに関する基本的な考え方と10項目の指針を示す部分、別添がリスク事例や実践的な取り組み例を収録した部分です。社内説明の骨組みには本編の10項目を使い、具体的な事例が欲しくなったら別添を開く、という使い分けができます。

ガイドラインが挙げる「共通の指針」10項目

ガイドライン本編には、AIに関わる事業者が踏まえるべき「共通の指針」として、次の10項目が示されています。項目名は原文のままで、当社が言い換えたものではありません。

共通の指針10項目(AI事業者ガイドライン第1.2版・表1)

項目 内訳(原文どおり)
1. 人間中心 人間の尊厳及び個人の自律/AIによる意思決定・感情の操作等への留意/偽情報等への対策/多様性・包摂性の確保/利用者支援/持続可能性の確保
2. 安全性 生命・身体・財産、精神及び環境への配慮/適正利用/適正学習
3. 公平性 バイアスへの配慮/人間の判断の介在
4. プライバシー保護 (単一項目)
5. セキュリティ確保 セキュリティ対策/最新動向への留意
6. 透明性 検証可能性の確保/情報提供/合理的かつ誠実な対応/説明可能性・解釈可能性の向上
7. アカウンタビリティ トレーサビリティの向上/対応状況の説明/責任者の明示/責任の分配/ステークホルダーへの対応/文書化
8. 教育・リテラシー AIリテラシーの確保/教育・リスキリング/フォローアップ
9. 公正競争確保 (単一項目)
10. イノベーション (単一項目)

※「(単一項目)」は、原文に細目が示されていないことを表す当社の補足です。

この10項目を丸ごと社内に説明する必要はありません。ポイントは、社内で「生成AIのリスクって何がありますか」と聞かれたときに、思いつきで答えるのではなく、「国のガイドラインでは10項目に整理されています」と根拠を示せることです。出典を示せる分類は、社内でも反論されにくくなります。

生成AIで特に増えたリスク

ガイドラインの「はじめに」では、生成AIについて特に触れている箇所があります。次の一文は原文からの引用です。

「特に生成AIに関して、知的財産権の侵害、偽情報・誤情報の生成・発信等、これまでのAIではなかったような新たな社会的リスクが生じており」

出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」第1.2版 本編 p.2(PDF)・確認日:2026-08-31

社内説明で「生成AIだと何が新しく心配なのか」と聞かれたときは、この原文の言い回し(知的財産権の侵害、偽情報・誤情報の生成・発信等)をそのまま使うことができます。ハルシネーション(誤情報の生成)について具体的な事例を掘り下げたい場合は、当社のハルシネーション解説記事もあわせて参照してください。

社内説明では「AI利用者」向けの項目だけ抜けばよい

ガイドラインには、主体ごとに整理された事項があります。そのうち、生成AIサービスを業務で使う立場である「AI利用者」向けの事項が、社内説明にそのまま使えます。10項目すべてを説明する必要はなく、ガイドラインの表1で「AI利用者」向けとして挙げられている事項だけを抜き出せば、社内説明としては十分成立します。

「AI利用者」向けの主体別事項(表1より抜粋・原文の言い回し)

  • 安全を考慮した適正利用
  • プロンプトに含まれるバイアスへの配慮
  • 個人情報の不適切入力及びプライバシー侵害への対策
  • セキュリティ対策の実施
  • 関連するステークホルダーへの情報提供 等

出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」第1.2版 本編 表1(PDF)・確認日:2026-08-31。「等」は原文にこれ以外の項目が続くことを示す表記です。

「個人情報の不適切入力及びプライバシー侵害への対策」は、まずこの項目から説明すると、話が具体的になります。「生成AIに何を入力していいか分からない」という悩みには、社内資料をChatGPTに入力していいかを整理した記事もあわせて紹介すると説明が具体的になります。

2025年9月からはAI法も施行されている

ガイドラインの「はじめに」には、AIに関する法律の動きについても触れられています。「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(令和7年法律第53号)が2025年6月に公布され、2025年9月に全面施行されています。

1行で覚えておく事実

「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(令和7年法律第53号)=2025年6月公布・2025年9月全面施行。
出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」第1.2版 本編 p.2(PDF)・確認日:2026-08-31

「ガイドライン」と「法律」は名称のとおり別の文書です。この記事で紹介した10項目は「AI事業者ガイドライン」というガイドラインに書かれている内容であり、上で触れた「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(令和7年法律第53号)とは別の文書です。両者がそれぞれ自社にどう適用されるか、ガイドラインに従うことと法令遵守がどう関係するかという法的な判断は、当社では行えません。正確な法的位置づけを確認したい場合は、専門家(弁護士など)に相談することをおすすめします。

説明の型(そのまま話せる順番)

ここまでの内容を、社内説明でそのまま話せる順番に並べ直すと、次のようになります。

社内説明の型(4ステップ)

  1. 根拠を示す:「国(総務省・経済産業省)のAI事業者ガイドライン第1.2版(2026年3月31日公表)を基準にしています」と言う
  2. 全体像を見せる:「共通の指針として10項目に整理されています」と言い、10項目の表を見せる
  3. 自社に関係する部分だけ絞る:「私たちは『AI利用者』の立場なので、この中の該当項目だけを説明します」と言い、利用者向けの抜粋を見せる
  4. 生成AI特有の注意点を添える:「生成AIでは特に、知的財産権の侵害や偽情報・誤情報の生成・発信が新しいリスクとしてガイドラインにも書かれています」と言う

この順番で話せば、10項目を丸暗記する必要も、自分の言葉でリスクを定義し直す必要もありません。社内で「その分類はどこから来たのか」と聞かれても、出典を示して答えられます。

この分類を使っても、上司の反対がそのまま収まるとは限りません。反対の中身を3つに分けて答える型は「上司に「AIは危ない」と言われたときの答え方|反対の中身を3つに分ける」にまとめました。

FAQ

この章で答える質問

  • 会社にAI利用ルールがまだない場合はどうすればいいか
  • 研修資料はどこから探せばいいか
  • ガイドラインに従っていれば法律違反にならないのか
  • 個人情報を誤って入力してしまった場合はどうするか
  • ガイドラインは今後も改訂されるのか

会社にまだAI利用ルールがない場合はどうすればいいですか?

この記事で扱った10項目はあくまで国が示す指針であり、社内の具体的なルール(何を入力してよいか、誰が承認するか等)はまた別に必要です。社内ルールのひな形を検討する場合は、社内AI利用ルールの記事を参照してください。

研修資料はどこから探せばいいですか?

この記事は「分類の説明」に絞っており、研修に配る資料そのものは扱っていません。公的機関が公開している教材をまとめた公的な教材のまとめ記事から探すことができます。

ガイドラインに従っていれば法律違反にならないのですか?

当社としてその判断はできません。ガイドラインは総務省・経済産業省が示す指針であり、法律そのものではありません。一方で、この記事でも触れた「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(令和7年法律第53号)のように、別に法律も存在し施行されています。ガイドラインへの対応と法令遵守は別の話として捉え、法的な判断が必要な場面では専門家に確認することをおすすめします。

個人情報を生成AIに誤って入力してしまった場合はどうすればいいですか?

この記事で紹介した「AI利用者」向け事項にも「個人情報の不適切入力及びプライバシー侵害への対策」が含まれています。具体的にどういった情報を入力してよいか・悪いかを整理したい場合は、社内資料の入力可否を整理した記事を参照してください。個別の事案でどう対応すべきかは、社内の情報管理担当や専門家に確認することをおすすめします。

ガイドラインは今後も改訂されるのですか?

これまで第1.0版(2024-04-19)から第1.2版(2026-03-31)まで複数回改訂されてきた実績があります。今後も改訂される可能性はありますが、次の改訂時期を当社が予測することはできません。社内説明で使う際は、参照する版数と公表日を必ず明記し、定期的に最新版を確認することをおすすめします。

まとめ

  • 生成AIのリスクを社内で説明するとき、一覧表を自作する必要はない。総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」第1.2版(2026年3月31日公表)に、共通の指針として10項目がすでに整理されている
  • 10項目すべてを説明する必要はなく、ガイドライン表1で「AI利用者」向けとされている事項(安全を考慮した適正利用、プロンプトのバイアスへの配慮、個人情報の不適切入力及びプライバシー侵害への対策など)だけを抜けば社内説明として成立する
  • 生成AIについては「知的財産権の侵害、偽情報・誤情報の生成・発信等」が新たな社会的リスクとしてガイドライン本編に明記されている
  • 2025年9月には「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(令和7年法律第53号)が全面施行されており、ガイドラインとは別に法律も存在する
  • 「ガイドライン」と上記の「法律」は名称のとおり別の文書であり、両者の適用関係や個別の法的判断は当社では行えないため、必要な場合は専門家に確認する

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