文字起こしアプリやAIツールには「話者分離」という機能がある。会議やインタビューを録音してかけると、発言が話者ごとに分かれて出てくる。ところが実際に使ってみると、Aさんの発言がBさんの名前で表示されていたり、3人で話しているのに2人分しか出てこなかったりする。
これは故障ではない。崩れる条件は、AmazonやMicrosoftなどの公式ドキュメント自身がそのまま明記している。この記事は、Google・Amazon・Microsoft・OpenAI・Notta・AutoMemoの公式ドキュメントを一次情報として確認し、「話者分離はどこまで正確か」に、精度の数字を使わずに答える。
この記事の結論(先に4つだけ)
- いちばん実害が大きいのは「人数のズレ」です。Amazon Transcribeは、指定した人数より実際の話者が多いと、超えた分を同じ1人として扱うと公式に明記しています。3人の会話を「2人」に設定して録音すると、機械的に誰かとまとめられます。
- 崩れる条件は、公式ドキュメント自身が公表しています。声が似ている・同時に話す(割り込み)・大人数の3つは、Amazonの公式資料が「精度が落ちる条件」として名指ししています。
- 会話の出だしは、まだ「誰か」が決まっていないことがあります。Microsoft Azureの公式サンプルでは、話し始めの一言が「Unknown」のまま表示され、発話が続いてから話者ラベルに変わります。
- 日本語で使えるかは、会社単位ではなく機能・モデル単位で違います。同じ会社の中でも「ファイルを渡す方式」と「その場で聞き取る方式」で対応言語が変わることがあります。
| 崩れる条件 | 何が起きるか | 公式の出どころ |
|---|---|---|
| 指定人数を実際の人数が超える | 超えた話者が既存のラベルに統合される | Amazon Transcribe(API仕様書) |
| 声が似ている | 精度が落ちる | Amazon Transcribe(AI Service Card) |
| 同時に話す・割り込みが多い | 精度が落ちる | 同上 |
| 1つの録音の話者が多い | 精度が落ちる | 同上 |
| 会話の出だし・発話がまだ短い | 話者が「Unknown」のまま表示される | Microsoft Azure AI Speech(公式ガイド) |
| 共有アカウントから複数人が発言 | 全員が1人にまとめられる | Notta(公式ヘルプ) |
この記事の根拠|確認した資料と、確認できなかったこと
ここに出てくる記述は、2026年8月23日に、Google・Amazon・Microsoft・OpenAI・Notta・AutoMemoの公式ドキュメントを実際に開いて確認したものだけです。当サイトはこれらのAPI・サービスを実際には動かしていません。数字や仕様はすべて「公式情報によると」の形で書き、確認日を添えます。英語の原文には、当サイトによる訳を添えます。
先に、確認できなかったことを書いておきます。「無い」と断定はせず、探した範囲だけを書きます。
1|AWS標準版(医療向けではない一般版)のストリーミング話者分離に、人数の目安を示す記述があるか → 見当たりませんでした。近い記述は医療向け版(Amazon Transcribe Medical)のページにのみありました。標準版と混同しないよう、本文では範囲を区別して書きます。
2|AWS・Azure・OpenAIの話者分離に、言語ごとの人数制限や対応状況の個別記載があるか → 公式の言語対応表・機能一覧を確認しましたが、話者分離の列自体が存在しない、または対応言語の個別記載を確認できませんでした。
3|話者分離の有無で料金が変わるか → 各社の料金ページは今回開いていません。唯一分かるのは、OpenAIでは話者分離が通常モデルと別モデル(gpt-4o-transcribe-diarize)になっている、というモデル単位の違いまでです。金額は本文に書きません。
4|「何秒以上話すとラベルが付くか」という最小発話長の数値 → 各社のページを走査しましたが数値の明記は見つかりませんでした。近い記載はAzureの「出だしはUnknownになることがある」という説明のみです。
会議の書き起こしそのものの作り方や、Teams・ChatGPTレコードモードでの話者ラベルの挙動は、別記事「AIで議事録を作る手順」で扱っています。この記事では、そちらでは扱っていない「独立系の文字起こしサービス全般で、話者分離がどんな条件で崩れるか」を一般論として書きます。
そもそも「話者分離」は何をする機能か|名前ではなく番号を振る
話者分離とは、声の切り替わりを検出して、検出した声に番号や記号を振る機能です。Googleの公式ドキュメントは、この機能を次のように説明しています。
This feature, called speaker diarization, detects when speakers change and labels by number the individual voices detected in the audio.
Google Cloud Speech-to-Text 公式ドキュメント「Multiple voices」(原文は英語。訳は当サイトによる・2026年8月23日確認)
当サイト訳:「この機能は話者分離と呼ばれ、話者の切り替わりを検出し、音声の中で検出した個々の声に番号でラベルを付けます。」名前を特定する機能ではなく、声を数えて区別する機能だという点が出発点です。
この「名前ではなく記号」という性質は、各社に共通しています。
| サービス | ラベルの形式 | 出典 |
|---|---|---|
| Google Cloud Speech-to-Text | 番号 | 公式ドキュメント「Multiple voices」 |
| Amazon Transcribe | spk_0〜spk_29という記号 |
公式ドキュメント「Diarization」 |
| Microsoft Azure AI Speech | Guest-1、Guest-2…という形式 |
公式ガイド「Speaker Diarization quickstart」 |
| Notta | 「話者1」「話者2」(オフの場合は「未指定話者」) | 公式ヘルプ(日本語) |
| AutoMemo | 話者ごとのブロックに分割(発言者名は人が書き換える設計) | 公式サイト |

Amazonの公式ドキュメントは、ラベルの割り当て方についてさらに踏み込んで説明しています。
Amazon Transcribe can differentiate between a maximum of 30 unique speakers and labels the text from each unique speaker with a unique value (spk_0 through spk_29).
Amazon Transcribe 公式ドキュメント「Diarization」(原文は英語。訳は当サイトによる・2026年8月23日確認)
当サイト訳:「Amazon Transcribeは最大30人までの話者を区別でき、それぞれの話者の発言に固有の値(spk_0からspk_29)でラベルを付けます。」上限は30人です。さらに公式は、このラベルが録音をまたいで意味を持たないことも明記しています。
Speaker labels are assigned based on voice characteristics within a single audio file or streaming session; labels are randomly assigned and are not consistent across separate audio files or sessions.
Amazon Transcribe 公式ドキュメント「AI Service Card」(原文は英語。訳は当サイトによる・2026年8月23日確認)
当サイト訳:「話者ラベルは、1つの音声ファイルまたはストリーミングセッションの中で、声の特徴にもとづいて割り当てられます。ラベルはランダムに割り当てられ、別々の音声ファイルやセッションをまたいで一貫しません。」今日の会議のspk_0と、明日の会議のspk_0は別人でありうる、という意味です。同じ機能はAmazonの別のドキュメントでさらに念を押しています。
Speaker diarization does not perform speaker identification or recognition. It cannot be used to identify who a speaker is, to match a speaker against a known voice profile, or to track the same speaker across separate audio files or sessions.
Amazon Transcribe 公式ドキュメント「AI Service Card」(原文は英語。訳は当サイトによる・2026年8月23日確認)
当サイト訳:「話者分離は、話者の識別や認識を行いません。話者が誰であるかを特定したり、既知の声のプロファイルと照合したり、別々の音声ファイルやセッションをまたいで同じ話者を追跡したりする用途には使えません。」
ミニ結論:話者分離は「誰が話したか」を声紋で特定する機能ではありません。「同じ録音の中で、何人の声が交互に出てきたか」を数えて番号を振る機能です。ラベルに実名を付けたい場合は、後述するとおり参照音声を渡すか、人の手で割り当てる必要があります。
ラベルに実名を付けるには、参照音声か手作業が必要
OpenAIの話者分離専用モデルには、既知の話者に実名を割り当てるオプションがあります。
You can optionally supply up to four short audio references with known_speaker_names[] and known_speaker_references[] to map segments onto known speakers. Provide reference clips between 2–10 seconds in any input format supported by the main audio upload
OpenAI公式ドキュメント「Speech to text」(原文は英語。訳は当サイトによる・2026年8月23日確認)
当サイト訳:「known_speaker_names[]とknown_speaker_references[]を使って、最大4人分の短い参照音声を任意で渡すことで、セグメントを既知の話者に対応づけられます。参照クリップは2〜10秒の長さで、メインの音声アップロードと同じ入力形式で渡してください。」裏を返せば、この参照音声を渡さない限り、ラベルに名前は付きません。
Nottaでは、話者の割り当てや編集自体は全プランで可能だと公式ヘルプが案内しています。
「プラン: すべてのプラン で利用できます」「録音中・文字起こし中のデータでは、話者の変更・編集・削除ができません。」
Notta 公式ヘルプ「話者を管理する」(2026年8月23日確認)
崩れたラベルは、最終的には人が直す前提で設計されているということです。AutoMemoの公式サイトも同じ考え方で、話者は自動でブロック分けされるものの、発言者名の書き換えを利用者が行う設計だと明記しています。
「話者を自動で認識してテキスト化し、話者ごとのブロックに分割します。」「話者は自動でブロック分け。 発言者名を書き換えて、 誤字を修正すれば議事録が完成します。」
AutoMemo 公式サイト(2026年8月23日確認)
指定した人数を実際の人数が超えると、複数人が「1人」にまとめられる
ここが、この記事でいちばん実害の大きい事実です。多くの話者分離機能は、話者の人数をあらかじめ指定させます。そして、その指定人数を実際の話者数が超えたとき、超えた分をどう扱うかが問題になります。
Amazon TranscribeのAPI仕様書は、このケースをはっきり書いています。
Specify the maximum number of speakers you want to partition in your media. Note that if your media contains more speakers than the specified number, multiple speakers are treated as a single speaker.
Amazon Transcribe APIリファレンス「Settings」(原文は英語。訳は当サイトによる・2026年8月23日確認)
当サイト訳:「メディアの中で分割したい話者の最大人数を指定してください。メディアに含まれる話者が指定した人数より多い場合、複数の話者が単一の話者として扱われることに注意してください。」
つまりこういうことです。3人で話している会議を「最大2人」の設定で処理すると、機能自体は結果を返しますが、3人目の発言は、1人目か2人目のどちらかのラベルにまとめて割り振られます。読み手が結果を見ただけでは、「3人目が実在した」こと自体が分かりません。
人数の指定にはルールがあります。
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 指定できる人数の範囲 | 最小2人・最大30人 | Amazon Transcribe APIリファレンス |
| 指定は必須か | 任意。ただし指定すると精度が上がる、と明記 | Amazon Transcribe(AI Service Card) |
| Googleの場合 | 「予想される話者数」に合わせて最小・最大の値を設定するよう明記 | Google Cloud Speech-to-Text 公式ドキュメント |
Googleの公式ドキュメントも、人数の事前把握を前提にしています。
You must set the min_speaker_count and max_speaker_count values according to how many speakers you expect in the transcript.
Google Cloud Speech-to-Text 公式ドキュメント「Multiple voices」(原文は英語。訳は当サイトによる・2026年8月23日確認)
当サイト訳:「文字起こしの中で予想される話者数に応じて、min_speaker_countとmax_speaker_countの値を設定する必要があります。」同じページには、区別できる人数の上限についてもう一つ条件が書かれています。
A transcription result can include numbers up to as many speakers as Cloud Speech-to-Text can uniquely identify in the audio sample.
Google Cloud Speech-to-Text 公式ドキュメント「Multiple voices」(原文は英語。訳は当サイトによる・2026年8月23日確認)
当サイト訳:「文字起こし結果に含まれる話者番号は、Cloud Speech-to-Textが音声サンプルの中で一意に識別できた人数までです。」「指定した人数ぶん、必ず区別してくれる」わけではなく、「識別できた分だけ」という保証のない書き方になっています。
ミニ結論:録音前に「今日は何人が話すか」を数えて、人数設定に反映することが、いちばん効果の大きい対策です。途中から人が増える会議(遅刻参加・電話での追加参加など)は、この機能がいちばん苦手にする場面だといえます。
公式が認めている「崩れやすい条件」3つ

Amazon Transcribeの公式資料(AI Service Card)には、話者分離の得意・不得意な条件がまとめて書かれています。この記事の「崩れる場面」の背骨になる一文です。
The feature performs best when speakers have distinct voice characteristics and when there is minimal overlapping speech. Performance may degrade when speakers have very similar voice characteristics, when there are many speakers in a single recording, or when speakers frequently interrupt one another.
Amazon Transcribe「AI Service Card」(原文は英語。訳は当サイトによる・2026年8月23日確認)
当サイト訳:「この機能は、話者の声の特徴がはっきり異なり、かつ発話の重なりが最小限であるときに最もよく機能します。話者の声の特徴が非常に似ている場合、1つの録音に多くの話者がいる場合、または話者が頻繁にお互いに割り込む場合には、性能が低下することがあります。」ここから3つの条件を切り出せます。
①声が似ている
声の特徴が非常に似ている場合は、公式が名指しで精度低下の条件に挙げています。家族・同性同士・年齢の近い人同士のような、声の高さや話し方が近い組み合わせを思い浮かべると分かりやすいはずです(この例示は当サイトによる補足で、公式が挙げているものではありません)。これは技術的な仕組み(声の特徴量の違いで区別する方式)から見ても自然な弱点です。
②同時に話す・割り込みが多い
発話の重なりと、頻繁な割り込みも、公式が精度低下の条件として挙げています。相づちや聞き返しの多い会話は、この「重なり」が起きやすい場面です(この対応づけは当サイトによる補足です)。「発話の重なりが最小限であるときに最もよく機能する」という書き方は、裏を返せば重なりが多い会話ほど不利になるという意味です。
③1つの録音に大人数がいる
1つの録音に含まれる話者が多いほど、精度が下がると公式が明記しています。前章で触れた「指定人数を超えると統合される」問題とは別に、そもそも人数が多いこと自体が不利な条件として書かれている点に注意してください。
⚠️ 範囲の注意:この引用はAmazon Transcribeの「医療向け(Medical)」ではない一般版の資料によるものです。医療向け版の別ページには「ストリーミングの話者分離は2〜5人で最良」という、より具体的な数値の記載がありますが、これは医療向け版限定の記述で、標準版に同じ記載があるかは確認できませんでした。「Amazonは2〜5人が最良だと言っている」のように、対象を限定せず一般化して書かないよう注意してください。
ミニ結論:①声が似ている ②同時発話・割り込みが多い ③大人数——この3条件がそろう場面(似た声の家族が、賑やかに話す)が、話者分離にとっていちばん条件の悪い場面だといえます。
会話の出だしは「不明」のまま表示されることがある
もう一つ、公式ドキュメントが実例つきで示している崩れ方があります。話者がまだ特定できていない間、ラベルが「不明」のまま出力されるという挙動です。Microsoft Azure AI Speechの公式ガイドは、この仕組みを次のように説明しています。
You might see Speaker ID=Unknown in some of the early intermediate results when the speaker isn’t yet identified. Without intermediate diarization results (if you don’t set the PropertyId.SpeechServiceResponse_DiarizeIntermediateResults property to “true”), the speaker ID is always “Unknown.”
Microsoft Azure AI Speech 公式ガイド「Speaker Diarization quickstart」(原文は英語。訳は当サイトによる・2026年8月23日確認)
当サイト訳:「話者がまだ識別されていない場合、初期の中間結果の一部で『Speaker ID=Unknown』と表示されることがあります。中間の話者分離結果を有効にしていない場合(PropertyId.SpeechServiceResponse_DiarizeIntermediateResultsプロパティをtrueに設定していない場合)、話者IDは常に『Unknown』になります。」
同じページに載っている公式のサンプル出力そのものが、この挙動を実演しています。
TRANSCRIBING: Text=good morning steve Speaker ID=Unknown
TRANSCRIBING: Text=good morning steve how are Speaker ID=Guest-1Microsoft Azure AI Speech 公式ガイド 出力例(原文は英語。訳は当サイトによる・2026年8月23日確認)
当サイト訳:最初の「good morning steve」の時点では話者IDが「Unknown」のまま表示され、発話が「good morning steve how are」まで続いた段階で「Guest-1」に変わっています。短い発話や、話し始めの一言だけを取り出すと、話者ラベルが付かないままになりうるということです。
あわせて、Azureの公式ドキュメントは対応方式の限定も明記しています。
The speech to text REST API for short audio doesn’t support real-time diarization.
Microsoft Azure AI Speech 公式ガイド(原文は英語。訳は当サイトによる・2026年8月23日確認)
当サイト訳:「短い音声向けのSpeech to text REST APIは、リアルタイムの話者分離に対応していません。」
ミニ結論:会話が始まった直後や、「はい」「うん」のような短い発話だけが独立して出てくる場面では、話者ラベルがまだ確定していない状態で表示されることがあります。発話が続くほど、ラベルは安定しやすいと考えられます。
声ではなく「参加者アカウント」で見分ける方式もある
ここまでは「声の特徴」で話者を区別する方式を見てきましたが、方式そのものが違うサービスもあります。Nottaの会議ボット機能(Notta Bot)は、声ではなく参加者のアカウントで話者を識別しています。
「会議の参加者アカウントに基づいて識別が行われるため、各発言者が 独立したアカウントから参加している ことをご確認ください。複数の参加者が共有アカウントから発言した場合、それらの発言はすべて共有アカウントにまとめられます。」
Notta 公式ヘルプ「話者識別機能はついていますか」(2026年8月23日確認)
この方式では、声が似ているかどうかは関係ありません。1台の端末・1つのアカウントを2人で共有して会議に参加すると、その2人の発言は自動的に1人分としてまとめられます。声で区別する方式とは、まったく別の理由で「複数人が1人になる」崩れ方が起きるということです。
ミニ結論:「うちのツールは話者分離が弱い」と感じたら、まずそのツールが声で区別する方式か、参加者アカウントで区別する方式かを確かめてください。方式が違えば、対策も変わります(声の方式なら人数設定の見直し、アカウントの方式なら参加者ごとに別アカウントで入る、という具合です)。
日本語で話者分離は使えるか|会社単位ではなく機能・モデル単位で違う

「この会社は日本語に対応している/していない」という単位では判断できません。同じ会社の中でも、機能やモデルの単位で対応言語が変わります。まず、Googleの公式ドキュメントは、対応言語を確認するよう利用者に求めています。
Review the language support page to see if this feature is available for your language.
Google Cloud Speech-to-Text 公式ドキュメント「Multiple voices」(原文は英語。訳は当サイトによる・2026年8月23日確認)
当サイト訳:「この機能がお使いの言語で利用できるかどうかは、言語対応ページで確認してください。」実際に公式の言語対応表を全行確認したところ、日本語(ja-JP)の行で話者分離に対応しているのは「Chirp 3」というモデルのみでした。Chirp 3の対応言語は限定されています。
Chirp 3 supports transcription and diarization only in BatchRecognize and Recognize in the following languages:
Google Cloud Speech-to-Text 公式ドキュメント「Chirp 3」(原文は英語。訳は当サイトによる・2026年8月23日確認)
当サイト訳:「Chirp 3は、以下の言語についてのみ、BatchRecognizeとRecognizeで文字起こしと話者分離に対応しています。」この直後に挙がる対応言語は14言語で、日本語(ja-JP)も含まれています。ただし同じページの機能表には、これと食い違う記述もありました。
Automatically identifies the different speakers in a single-channel audio sample. Available only in Speech.BatchRecognize
Google Cloud Speech-to-Text 公式ドキュメント「Chirp 3」機能表(原文は英語。訳は当サイトによる・2026年8月23日確認)
当サイト訳:「1チャンネルの音声サンプルの中で、異なる話者を自動的に識別します。Speech.BatchRecognizeでのみ利用可能。」本文は「BatchRecognizeとRecognizeの両方」、機能表は「BatchRecognizeのみ」と、同じページの中で記述が割れています。どちらが正しいかを当サイトでは決着できないため、この記事では「バッチ処理(音声ファイルをまとめて渡す方式)で使える」とだけ書き、リアルタイム対応の断定はしません。
| サービス | 日本語での話者分離 | 出典 |
|---|---|---|
| Google Cloud Speech-to-Text | Chirp 3モデルのみ対応(14言語限定・ja-JP含む)。バッチ処理で使える | 公式言語対応表・Chirp 3ドキュメント |
| Amazon Transcribe | 日本語(ja-JP)はバッチ・ストリーミングとも入力対応。言語ごとの制限記載は確認できず | 公式サポート言語表・機能一覧表 |
| Microsoft Azure AI Speech | 人数上限・言語ごとの対応の個別記載は確認できず | 公式ガイドを全文確認 |
| OpenAI(gpt-4o-transcribe-diarize) | 対応言語の個別記載は確認できず | 公式ドキュメントを全文確認 |
| Notta | マイク録音のリアルタイム文字起こしは日本語のみ話者識別が可能(最大10名)。ファイルアップロードは全言語対応(最大10名) | 公式ヘルプFAQ(更新日2025年8月4日と記載) |
Nottaの公式FAQは、「話者識別の可否はご利用の文字起こし機能や、発話言語によって異なります」と、機能によって違うという前提をそのまま明記しています(2026年8月23日確認)。マイク録音のリアルタイム文字起こしについては、次のように案内しています。
「発話言語が日本語の場合のみ話者識別が可能で、最大10名までの話者を識別できます。」
Notta 公式ヘルプ 同上(マイク録音のリアルタイム文字起こしについて・2026年8月23日確認)
「ファイルをアップロードする際に話者識別機能をオンにすることで識別が可能です。 すべての発話言語で利用でき、最大10名までの話者を識別できます。」
Notta 公式ヘルプ 同上(ファイルアップロードについて・2026年8月23日確認)
同じNottaの中でも、「マイクでその場を録音する方式」は日本語限定、「ファイルをアップロードする方式」は全言語対応と、機能単位で対応が分かれています。さらに公式は、プランのアップグレードなどで再文字起こしが走ると、手作業で直した話者情報が新しい処理結果に上書きされて消えることがあると注意を明記しています(FAQでも触れます)。手直しした結果は、別途保存しておくほうが安全です。
ミニ結論:「日本語で話者分離が使えるか」は、契約する前に「どの入力方式(マイクか、ファイルか、ストリーミングか)で使うか」まで含めて確認してください。会社単位の対応表だけでは判断を誤ります。
崩れたときにどうするか|用途別の3択
ここまでの崩れ方を踏まえて、どこまで手直しをするかは、その書き起こしを何に使うかで変えるのが合理的です。
| 用途 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 第1に:自分用のメモ(あとで自分が読み返すだけ) | そのままでよい。崩れていても、内容自体は自分で分かる | 実害が発言者の取り違えに直結しない |
| 第2に:社内で共有する(議事録・報告書として配る) | 人数を事前に数えて設定し直す。結果を見て「Unknown」「未指定話者」が残っていないか確認する | 誰の発言かが人事評価や意思決定の記録として残る可能性がある |
| 第3に:社外に出す・記録として保存する(契約や合意の経緯を残す用途など) | 第2の対策に加え、録音を聞きながら人の目で最終確認する。 | 取り違えたまま外部に出ると訂正が難しい |
会議そのものでの対処(冒頭で名乗ってもらう運用や、Teams・ChatGPTレコードモードでの挙動)は、AIで議事録を作る手順で扱っています。あわせて、録音の道具そのものを見直したい場合はICレコーダーとAI文字起こしの費用比較、専用レコーダーの機種を比較したい場合はPLAUDの機種比較を参考にしてください。
よくある質問
Q. 話者分離の精度は何%くらいですか?
A. この記事では、精度を%で示すことはしません。この記事で確認した公式ドキュメント(出典欄の14件)の範囲では、話者分離そのものの精度を示す公開の数値は見つかりませんでした。この記事で書けるのは、公式が「どういう条件のときに崩れやすいか」を明記している範囲までです。文字起こし自体の精度(誤字・聞き取りの正確さ)を比較記事の数字でそのまま信じてよいかは、当サイトの別記事で扱う予定です。
Q. 話者の名前を後から自分で直せますか?
A. できます。むしろ、それが前提の設計になっています。Nottaは全プランで話者の変更・編集ができると公式に案内しており、AutoMemoも発言者名を利用者が書き換える設計だと公式サイトに明記しています。OpenAIは参照音声(1人あたり2〜10秒)を渡すことで、既知の話者に自動で名前を割り当てる機能があります。ただしNottaでは、プランのアップグレードなどで再文字起こしが走ると、手直しした話者情報が上書きされて消えることがあると公式が注意しています。
Q. 話者分離は、声から「誰であるか」を特定しているのですか?
A. いいえ。Amazon Transcribeの公式ドキュメントは「話者分離は、話者の識別や認識を行いません」と明記しています。行っているのは、同じ録音の中で「何人の声が交互に出てきたか」を区別して番号を振ることです。既知の人物の声紋と照合して名前を特定する機能ではありません。
Q. Web会議(Zoom・Teamsなど)ではどうなりますか?
A. Web会議ツールごとに挙動が異なります。Teams・ChatGPTレコードモードでの話者ラベルの挙動と、その対処法はAIで議事録を作る手順にまとめています。この記事では、声の特徴で区別する方式(Google・Amazon・Azure・OpenAI)と、参加者アカウントで区別する方式(Notta Bot)という、2つの方式の違いまでを扱いました。
Q. 崩れないようにする一番の対策は何ですか?
A. 公式ドキュメントから読み取れる範囲でいえば、録音前に話者の人数を数え、機能側の人数設定に反映することです。Amazon Transcribeは人数の事前指定で精度が上がると明記しており、Googleは人数設定そのものを必須にしています。声が似ている・同時発話が多い・大人数という3条件は事前には避けにくいものですが、人数の設定だけは録音前にできる対策です。
まとめ|次にすることは1つ
- いちばん実害が大きいのは人数のズレです。指定人数を実際の話者数が超えると、超えた分は既存のラベルに統合されます(Amazon Transcribe公式)。
- 崩れる条件は、公式ドキュメント自身に書かれています。声が似ている・同時発話が多い・大人数の3つ(Amazon公式)が代表例です。
- 会話の出だしなど、話者がまだ特定できていない場面は「Unknown」のラベルになることがあります(Azure公式サンプルで実演されています)。
- 方式そのものが違うサービスもあります。声で区別する方式と、参加者アカウントで区別する方式では、崩れ方も対策も別物です。
- 日本語対応は会社単位ではなく、機能・モデル単位で確認してください。同じ会社でも入力方式によって対応が変わります。
次にすること:使っている(あるいは検討している)文字起こしサービスの公式ドキュメントを開き、話者分離の項目で「人数の指定は必須か」「超過時にどう扱われるか」の2点だけ確認してください。この2点が分かるだけで、この記事で挙げた崩れ方の大部分に備えられます。
出典
- Google Cloud Speech-to-Text 公式ドキュメント「Multiple voices(話者分離)」https://cloud.google.com/speech-to-text/docs/multiple-voices(2026年8月23日確認)
- Google Cloud Speech-to-Text 公式ドキュメント「対応言語」https://cloud.google.com/speech-to-text/docs/speech-to-text-supported-languages(2026年8月23日確認)
- Google Cloud Speech-to-Text 公式ドキュメント「Chirp 3」https://docs.cloud.google.com/speech-to-text/docs/models/chirp-3(2026年8月23日確認)
- Amazon Transcribe 公式ドキュメント「Diarization」https://docs.aws.amazon.com/transcribe/latest/dg/diarization.html(2026年8月23日確認)
- Amazon Transcribe APIリファレンス「Settings」https://docs.aws.amazon.com/transcribe/latest/APIReference/API_Settings.html(2026年8月23日確認)
- Amazon Transcribe「AI Service Card(責任あるAIの概要)」https://docs.aws.amazon.com/ai/responsible-ai/transcribe-speech-recognition/overview.html(2026年8月23日確認)
- Amazon Transcribe Medical 公式ドキュメント「ストリーミングの話者分離」https://docs.aws.amazon.com/transcribe/latest/dg/conversation-diarization-streaming-med.html(2026年8月23日確認・医療向け版限定の記述として引用)
- Amazon Transcribe 公式ドキュメント「対応言語」https://docs.aws.amazon.com/transcribe/latest/dg/supported-languages.html(2026年8月23日確認)
- Amazon Transcribe 公式ドキュメント「機能一覧(feature matrix)」https://docs.aws.amazon.com/transcribe/latest/dg/feature-matrix.html(2026年8月23日確認)
- Microsoft Azure AI Speech 公式ガイド「Speaker Diarization quickstart」https://learn.microsoft.com/en-us/azure/ai-services/speech-service/get-started-stt-diarization(2026年8月23日確認)
- OpenAI公式ドキュメント「Speech to text」https://platform.openai.com/docs/guides/speech-to-text(2026年8月23日確認)
- Notta 公式ヘルプ「話者識別機能はついていますか」https://support.notta.ai/hc/ja/articles/10288050523803-話者識別機能はついていますか(2026年8月23日確認・FAQ更新日として2025年8月4日の記載あり)
- Notta 公式ヘルプ「話者を管理する」https://support.notta.ai/hc/ja/articles/37552986978587-話者を管理する(2026年8月23日確認)
- AutoMemo 公式サイトhttps://automemo.com/(2026年8月23日確認)


コメント