「生成AIを入れたほうがいい」と言われても、社員10人の会社で何から手をつければいいのかが分からない。ネットで調べると「5ステップ」「3ステップ」「7ステップ」と書いてあって、どれも段階の数が違う——。
先にお伝えします。「生成AI導入の正しい手順」を定めた公的な文書は、当サイトが確認した範囲では見つかりませんでした。それどころか、国の資料は「順序は事業者ごとの状況に応じて変わり得る」「並行して対応することも念頭に」とはっきり書いています。だから記事ごとに段階数が違うのです。この記事は、公的文書が実際に求めている範囲だけを示したうえで、順番と、誰が何を決めるか、いくらかかるか、そして今は見送ってよい会社の条件までをお渡しします。
先に結論(この記事の要点5つ)
- 順番は4つで足ります。①業務を1つに絞る ②まず手元の環境で試す ③最低限のルールを決める ④効果を確かめて横に広げる。ただしこの並びは当サイトの整理であって、国が決めた順番ではありません。
- その前に、ステップ0として「もう使われていないか」を確かめてください。国の調査では、生成AIの利用を禁止していると答えた中小企業は1.2%。その一方で「方針を明確に定めていない」中小企業が31.5%ありました(総務省『令和8年版 情報通信白書』2025年度調査・日本の中小企業 n=162)。禁止も許可もしていない会社が、およそ3社に1社あるということです。
- 公的文書は「体制の準備事項」を4つ挙げているだけで、手順の順番は決めていません。しかも同じ資料に「既存の体制があれば、必ずしもAI活用のために体制を新規に構築する必要はありません」と書かれています。ゼロから作り直す必要はありません。
- 費用は実額で出せます。ChatGPT ビジネスは1ユーザーあたり月額¥3,050(2名以上・年額課金)、Google Workspace は Business Starter が1ユーザーあたり月額¥800。5人の会社なら年18万3千円と年4万8千円です(いずれも公式表示・2026年8月16日確認。税込か税抜かの記載は見当たりませんでした)。
- 今は見送ってよい会社があります。当サイトが同日に開いた競合13本の中に、「今はやらないほうがよい」と書いた記事は1本もありませんでした。この記事は最後に、見送ってよい条件と、その場合に先にやることを表で示します。

この記事の根拠|見た資料と、確認できなかったこと
この記事の数字と条件は、すべて下の一次資料を実際に開いて確認したものです。下の表に挙げた資料の確認日は、すべて2026年8月16日です。ただし2点だけ、2026年8月6日に確認した当サイトの記録によっています(①ChatGPTの個人向け/法人向けプランにおけるデータの扱い ②個人情報保護委員会の注意喚起が3つの読み手に分けて書かれていること)。該当箇所には本文中でその都度、確認日を書いています。詳しくは末尾の出典をご覧ください。競合記事の内容を根拠にした箇所はありません。
| 確認した資料 | 発行元 | この記事で使った箇所 |
|---|---|---|
| AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(全42ページ) | 総務省・経済産業省 | 対象範囲、共通の指針10、AI利用者に関する事項7項目 |
| 同 活用の手引き(案)(全39ページ) | 総務省・経済産業省 | 準備事項4つ、順序についての記述、誤解の訂正3つ |
| 同 チェックリスト(別添7)(全2ページ) | 総務省・経済産業省 | 項目数(A=9項目・B=12項目) |
| 令和8年版 情報通信白書(第Ⅰ部第2章第1節)と付注 | 総務省 | 企業の活用方針、組織的な取組、リスクと対策 |
| 2026年版 中小企業白書 概要(全51ページ) | 中小企業庁 | AI(生成AIを含む広義のAI)を活用しない理由の上位5つ、部門別の活用状況 |
| デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)(全52ページ) | 中小企業庁・事務局 | 補助率、補助額、対象経費、申請の前提 |
| AI利用者のためのセキュリティ豆知識(全24ページ) | IPA(情報処理推進機構) | 対策5項目、想定読者 |
| 情報セキュリティ10大脅威 2026 | IPA | 組織向けの順位 |
| ChatGPT 料金ページ/Google Workspace 料金ページ | OpenAI/Google | 法人プランの実額 |
確認できなかったこと(この記事に書いていないこと)
- 経済産業省のサイトは、当サイトの取得環境からは一律で拒否され、中身を読めませんでした。4URLに対し、ブラウザ相当のヘッダを含む4通りの取得方法と別ツール1回を試し、すべてHTTP 403。返ってきたのは同省の定型エラーページです。「ページが存在しない」という意味ではありません。読めていないので、内容は書いていません。なおAI事業者ガイドラインは総務省側にも同じPDFがあり、そちらから取得しました。
- Microsoft 365 Copilot の料金は確認できていません。公式ページが当サイトの取得環境ではブロックされました。金額を推測で書くことはしません。
- Google Workspace に含まれるGeminiについて、単体の追加料金は確認できていません。各プランの機能欄に含まれる旨の記載は確認できましたが、別料金の有無は読み取れませんでした。
- AI事業者ガイドラインの別添(付属資料)は取得していません。実践例や取組事例が入っている資料ですが、開いていないので触れていません。
- 個々の生成AIサービスが補助金のITツールとして登録済みかどうかは確認していません。登録の有無は公式の検索でご自身で確かめてください。
まず確かめる|あなたの会社では、もう使われているかもしれません
導入の第1歩は、業務の棚卸しではありません。「すでに誰が、何を、どこに入力しているか」を把握することです。ここを飛ばして新しい仕組みを入れると、旧来の使われ方がそのまま残ります。
総務省『令和8年版 情報通信白書』の企業調査から、この段階の判断に効く数字だけを挙げます。この調査は「日本の中小企業一般」を対象にしたものではありません。下の注記を必ずセットで読んでください。
| 数字 | 内容 | 母数 |
|---|---|---|
| 1.2% | 生成AIの「利用を禁止している」と答えた中小企業(2025年度) | 中小企業 n=162 |
| 4.5% | 同(大企業) | 大企業 n=353 |
| 58.1% | 「積極的に活用する方針」+「活用する領域を限定して利用する方針」の合計(中小企業・2025年度) | 中小企業 n=162 |
| 74.0% | 同(大企業) | 大企業 n=353 |
| 31.5% | 「方針を明確に定めていない」中小企業(2024年度は47.6%) | 中小企業 n=162 |
| 45.6% | 「生成AI活用による組織的な取組はない」中小企業(大企業は18.1%) | 中小企業のうち「利用を禁止している」と答えた対象を除く |
この数字を読むときの前提(白書の付注より)
- 調査方法はインターネットアンケート、調査期間は2026年1月から2月。
- 対象は従業員10名以上で、2025年までにデジタル化の取組を開始した企業に勤める管理職以上の人。つまりすでにデジタル化に着手している会社の、決裁層だけを集めた調査です。
- 日本の中小企業の回答数は162。1社あたり約0.6ポイント動きます。小数第1位の差に意味を読み取らないでください。
- 企業規模の区分は業種別で、製造業・建設業・運輸業・情報通信業などは従業員300人未満、卸売業・小売業・サービス業などは100人未満を「中小企業」としています。
この表から、まず2つのことが分かります。1つ目は、生成AIの利用を禁止している中小企業が1.2%しかないこと。2つ目は、その一方で「方針を明確に定めていない」中小企業が31.5%あることです。つまり禁止も許可もしていない、方針そのものが決まっていない会社が、およそ3社に1社あるということです。ここが多くの中小企業の出発点になります。
もうひとつ、別の設問の数字があります。生成AI活用による「組織的な取組はない」と答えた中小企業が45.6%(大企業は18.1%)でした。31.5%と45.6%は測っているものが違います。31.5%は会社としての方針が決まっているか、45.6%は実際に組織として動いているかです。方針だけは決めていても組織としては動いていない会社があるため、2つの数字は一致しません。「禁止も許可もしていない」の根拠になるのは31.5%のほうです。
「組織的な取組がない」まま個人が使っている状態で何が起きるかは、当サイトの別記事で扱っています。社内の資料を読ませてよいかの判断は社内資料をChatGPTに読ませていいかの判定フローへ、すでに入力してしまった場合の対処はChatGPTに個人情報を入力してしまったときの対処へ進んでください。この記事では、その中身は繰り返しません。
参考までに、IPA(情報処理推進機構)の『情報セキュリティ10大脅威 2026』では、組織向けの3位に「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が入りました。IPAの資料によれば、この項目は2026年に初めて選出されたものです。
まとめると:ステップ0でやることは1つだけです。「この会社で、いま誰が生成AIを使っているか」を聞いて回ること。禁止でも許可でもない状態が続いているなら、そこが出発点です。
公的文書は「正しい5ステップ」を決めていません
ここがこの記事でいちばんお伝えしたい部分です。国は導入の手順を段階として定めていません。定めているのは「準備しておくとよい事項」が4つと、AIを使う側が意識する事項が7つ。順番については、むしろ自社で決めてよいと明記しています。
まず、どの文書が最新版か
中小企業が経営側の視点で読むべき文書は、総務省・経済産業省の『AI事業者ガイドライン』です。2026年8月16日時点で、総務省の掲載ページには4世代が併記されていました。
| 版 | 公表日 | 状態 |
|---|---|---|
| 第1.2版 | 令和8年3月31日 | 現行(この記事が読んだ版) |
| 第1.1版 | 令和7年3月28日 | 旧版 |
| 第1.01版 | 令和6年11月22日 | 旧版 |
| 第1.0版 | 令和6年4月19日 | 旧版 |
ひとつ注意点があります。付属資料のうち「別添8」だけは第1.0版のままで、掲載ページに更新なしと明記されています。「全部が第1.2版」ではありません。
ガイドラインが自分で否定している、3つの誤解
『活用の手引き(案)』は、6ページ目で誤解を3つ挙げ、×印をつけて自ら否定しています。ここは中小企業にとって特に大事なので、原文のまま引用します。
× AI事業者ガイドラインの記載事項の遵守は義務である
AI事業者ガイドラインは義務を課すものではなく、事業活動においてAIを開発・提供・利用する全ての者を対象に、AIのリスクを正しく認識し、自主的に対策を講じるための考え方を示しているものです。
× AI事業者ガイドラインに書いてあることは、全てそのまま自社に適用すればよい
自社の事業規模および状況等に合わせて過不足なく対応いただくことが重要です。
× データ提供をする者や、個人でAIを利用する場合も対象になっている
「事業活動においてAIの開発・提供・利用を担う全ての者」を対象としており、「データ提供者」や、個人でAIを扱う「業務外利用者」は対象外です(AI事業者ガイドラインの内容自体はどのような立場の方にとっても参考となり得ます)。
つまり、「ガイドラインで義務づけられている」「守らないと罰則がある」と書くのは誤りです。同時に「守らなくてよい」も公式は言っていません。公式が言っているのは「自主的に対策を講じるための考え方」である、というところまでです。

公式が挙げているのは、順番ではなく「準備事項4つ」
『活用の手引き(案)』の3章1が挙げているのは、次の4つです。番号は並び順であって、実施の順番ではありません。
| 資料での並び順 | 準備事項 | 対応事項の概要(原文) |
|---|---|---|
| 1つ目 | 組織内のAI開発・提供・利用の状況を把握する仕組み | 組織内のAI開発・提供・利用の状況を適切に把握し、組織のAIリスク評価を適切に実施できる準備を整える。 |
| 2つ目 | リスク評価体制の構築 | リスク評価に関して相談できる体制を構築し、リスクベースアプローチの考え方で基準を設けて、窓口に相談する場合とセルフチェックで良い場合を分けて対応する。 |
| 3つ目 | インシデント報告体制の構築 | インシデントが発生した場合にも、適切な対応が取れるよう体制およびプロセスを整備する。 |
| 4つ目 | 組織が扱うAIの特性に応じたルールの策定・運用 | 組織が扱うAIに対する考え方について共通認識を持てるように、ルールを整備し、周知する |
そして同じ資料の21ページに、順番についての記述があります。
また、準備事項の取り組み順序については、事業者ごとの状況に応じて変わり得るため、並行して対応することも念頭に置き、ご判断ください。
さらに24ページと26ページには、同じ一文が2回出てきます。中小企業にとっては、この記事で最も安心できる一文かもしれません。
Point 既存の体制があれば、必ずしもAI活用のために体制を新規に構築する必要はありません。
使う側がまず読むのは「第5部」
本編42ページのうち、AIを開発せず使うだけの会社がまず読むのは、第5部「AI利用者に関する事項」です。当サイトが数えたところ7項目で、番号はU-2から始まります(U-1は存在しません)。本編の一覧表で、共通の指針の1番目にあたる欄には記載がないためです。
ただし「第5部だけ読めばよい」という意味ではありません。本編の表1では、第2部C「共通の指針」の各項目にAI利用者(U)の欄が設けられており、共通の指針も使う側が対象に含まれます。「まず第5部から」というのは当サイトの整理で、公的資料が読む順番を指定しているわけではありません。
その7項目のうち、導入を決める段階で押さえておきたい3項目を、原文のまま挙げます。各項目に含まれる行はすべて載せていますので、行の省略はありません。末尾の括弧は、その行がどの指針に対応するかを示す原文の表記です。
➢ U-4)i. 個人情報の不適切入力及びプライバシー侵害への対策
・AI システム・サービスへ個人情報を不適切に入力することがないよう注意を払う(「4)プライバシー保護」)
・AI システム・サービスにおけるプライバシー侵害に関して適宜情報収集し、防止を検討する(「4)プライバシー保護」)
➢ U-5)i. セキュリティ対策の実施
・AI 提供者によるセキュリティ上の留意点を遵守する(「5)セキュリティ確保」)
・AI システム・サービスに機密情報等を不適切に入力することがないよう注意を払う(「5)セキュリティ確保」)
➢ U-7)ii.提供された文書の活用及び規約の遵守
・AI 提供者から提供された AI システム・サービスについての文書を適切に保管・活用する(「7)アカウンタビリティ」)
・AI 提供者が定めたサービス規約を遵守する(「7)アカウンタビリティ」)
残る4項目(U-2)i/U-3)i/U-6)i/U-7)i)は、この記事では引用していません。全文は出典のPDFで読めます。
「不適切に入力しない」の具体的な中身、つまり何を入力してはいけないのかは、当サイトのAIに入力してはいけない情報7選にまとめています。この記事では列挙しません。
数え方の注意|「10の指針をチェックリストで確認できる」は誤り
細かい話ですが、間違えやすいので書いておきます。共通の指針は10個、チェックリスト(別添7のA)は9項目で、1対1に対応していません。当サイトが両方を突き合わせたところ、指針の「教育・リテラシー」「公正競争確保」「イノベーション」に対応する独立したチェック項目はありませんでした。代わりに、ポリシーの策定について問う項目と、自社の状況に応じた具体的なアプローチの検討について問う項目が入っています。
「中小企業向けのガイドライン」は見つかりませんでした(探した範囲)
AI事業者ガイドライン本編(全42ページ)を「中小」「中堅」「小規模」「事業規模」「規模」の5通りで検索したところ、「中小」「中堅」「小規模」は0件でした。活用の手引き(全39ページ)も「中小」「中堅」「小規模」「スタートアップ」「従業員」「リソースが限」「人手」の7通りで検索し、中小企業を名指しした記述は0件。規模に触れているのは「自社の事業規模および状況等に合わせて過不足なく対応いただくことが重要です」の1箇所だけでした。
つまり「国が中小企業向けの導入手引きを出している」とは言えません。正確には「これから始める事業者向けの手引きがあり、規模に合わせて過不足なく対応するようにと書かれている」です。
まとめると:公式に従うというのは、5ステップを順番どおりに実行することではありません。準備事項4つを、自社の規模に合わせて、順番は自分で決めて進めることです。既存の体制があるなら、それを流用してかまわないと公式が書いています。
順番はこの4つ|各ステップで「決めること」だけを決める
ここからは当サイトの整理です。国が定めた順番ではありません。ただし、下の4つは順番に依存関係があります。使う業務が決まらないとツールの要否が決まらず、ツールが決まらないと守るべきルールの中身が決まらず、ルールが決まらないと横に広げられません。だからこの並びにしています。
それぞれの段階で「決めること」だけを書きます。やり方の詳細は、当サイトの該当記事へ送ります。

ステップ1|業務を1つに絞る
決めること:どの1業務から始めるか。それだけです。
ここで全社の業務を洗い出そうとすると、たいてい止まります。中小企業庁『2026年版 中小企業白書 概要』の調査では、AIを活用していない理由の1位が「活用する業務がイメージできていない」で63.4%でした。業務が思いつかないという状態は、あなたの会社だけの問題ではなく、いちばん多い状態です。
⚠️ この白書の「AI」は、生成AIだけを指していません(以降の引用すべてに関わります)
中小企業白書の注には、次のように書かれています。
ここでの「AI」とは、人工知能のことであり、画像認識、音声認識、自然言語処理、データ分析、意思決定支援、生成AIなどを指す。
つまりこの白書から引く数字は、生成AIだけの数字ではありません。画像認識やデータ分析なども含んだ、広い意味でのAIについての回答です。さらに設問には「2019年以降の省力化投資のうち」という限定もかかっています。
調査の素性は次のとおりです。調査元=帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」/調査時点=2025年11月から12月/掲載=2026年版中小企業白書 概要(2026年4月24日 閣議決定)。この記事では、以降「AI(生成AIを含む広義のAI)」と書いて区別します。
同じ白書によると、AI(生成AIを含む広義のAI)の活用に取り組んだ企業のうち、活用している部門は次のとおりです。この数字も「どこから始めるか」の目安になります。
| 部門 | 活用している割合 | 回答数 |
|---|---|---|
| バックオフィス部門 | 73.4% | n=1,577 |
| 営業・販売・顧客対応部門 | 68.2% | n=1,605 |
| 製造・生産管理・物流部門 | 57.2% | n=1,210 |
※出典=中小企業庁『2026年版 中小企業白書 概要』(帝国データバンク調査・調査時点2025年11月から12月)。AI活用に「取り組んだ」と回答した事業者に聞いたもので、「該当部門はない」と回答した事業者は除かれています。ここでのAIは生成AIに限りません(上の注意ボックス)。なお、この記事では57.2%が2箇所に出てきます。ここでは製造・生産管理・物流部門の割合、後半の「うまくいかないとき」の表では米国企業の割合で、別の数字です。
※上の63.4%の出典も同じ白書です。母数はn=3,888(2019年以降の省力化投資のうち、AI活用に「取り組んでいない」と回答した事業者)。回答割合が高い順に上位5つだけが表示されており、選択肢の全リストではありません。複数回答のため合計は100%になりません。
具体的な業務の候補と、任せてよい範囲・確認すべき箇所は、当サイトの事務職のChatGPT活用10パターンと業務の棚卸しにまとめてあります。棚卸しの用紙もそちらです。この記事では作りません。
まとめると:1業務です。2業務ではありません。効果が測れなくなるので、最初は必ず1つに絞ってください。
ステップ2|まず手元の環境で試す
決めること:この段階では「法人プランに移るかどうか」を決めません。
多くの記事が2番目に「ツールを選ぶ」を置きますが、当サイトはそうしません。使う業務が1つしか決まっていない段階で契約を決めると、使われないまま契約だけが残るからです。まずは無料の範囲、または担当者1人の有料プランで、その1業務が本当にうまくいくかを見ます。
ただし無料のまま試す場合に、必ず知っておくべきことが1つあります。OpenAIの公式説明によると、個人向けのサービスでは入力した内容がモデルの学習に使われることがあります(当サイトが2026年8月6日に確認)。営業秘密や個人情報を入れて試すのは、この段階では避けてください。
IPAの『AI利用者のためのセキュリティ豆知識』も、対策の1番目に「クラウドAIに営業秘密は教えない」を置いています。同資料には次の記述があります。
・利用するチャットAIのサービス規約やチャットAIの利用時設定を確認することで、ユーザー入力を保存やAIの学習対象から除外できます
この段階で決めないこと(3つ)
- どのサービスを全社で使うか
- 法人プランに移るかどうか
- 何人ぶんの席を買うか
どのサービスを選ぶかの比較は、当サイトのChatGPT・Gemini・Claudeの用途別比較にあります。学習の扱いも3社分そちらで比較しています。この記事では比較表を作りません。
まとめると:試すのはツールではなく業務です。ツールの選定は、その業務がうまくいってから決めても遅くありません。
ステップ3|最低限のルールを決める
決めること:入力してよい情報の線と、困ったときの相談先。この2つだけです。
いきなり立派な規程を作ろうとしないでください。前述のとおり、公式は「自社の事業規模および状況等に合わせて過不足なく対応いただくことが重要」と書いています。5人の会社に、100人の会社と同じ文書量は要りません。
ルールが無いこと自体が、導入を止める理由になっています。中小企業庁『2026年版 中小企業白書 概要』では、AI(生成AIを含む広義のAI)を活用していない理由の3位が「社内ルール・ガイドラインが整備されていない」で26.2%でした(帝国データバンク調査・調査時点2025年11月から12月・n=3,888・上位5つのみ表示・複数回答)。
逆の側から見ると、総務省『令和8年版 情報通信白書』で、日本企業がリスク対策として最も多く挙げたのは「全社的な指針やガイドラインを整備している」で41.1%でした(2025年度調査・日本の企業 n=515。うち大企業353・中小企業162)。
この2つは別々の調査です。調査元も(帝国データバンク/総務省の委託調査)、調査時点も(2025年11月から12月/2026年1月から2月)、母数も(3,888/515)、対象も、「AI」の指す範囲も違います(広義のAI/生成AI)。足し引きしたり、どちらが正しいかを比べたりできる数字ではありません。ここでは「ルールが無いことが止める理由になり、ルールを作ることが対策の1位になっている」という方向の一致だけを見ています。
入力してよい情報の線引きは、当サイトのAIに入力してはいけない情報7選をそのまま社内の出発点に使えます。この記事では中身を列挙しません。また、個人向けと法人向けのプランで扱いがどう違うかは社内資料をChatGPTに読ませていいかの判定フローで詳しく扱っています。
まとめると:最初のルールは紙1枚で足ります。「入れてはいけないもの」と「困ったら誰に言うか」——この2つが書いてあれば、ステップ4に進めます。
ステップ4|効果を確かめて、横に広げる
決めること:続けるか、やめるか、別の業務に移すか。
ここを飛ばすと、導入したかどうかも分からないまま時間が過ぎます。確認するのは次の3つです。記録の仕方と、逆に測らなくてよいものは、この記事の後半で詳しく扱います。
4週間後に確認する3つ
- 着手から完成までの時刻は、開始前より短くなったか
- 人が直した箇所は減ったか
- やらなくなった作業はあるか
3つとも変化がなければ、その業務は向いていなかったというだけです。別の業務に移してください。
広げ方について、中小企業庁『2026年版 中小企業白書 概要』が挙げている方向があります。同白書の該当項目は、デジタル化の効果を高めるためには従業員のITツール活用促進に向けた研修や勉強会の実施、部門間連携が有効としています(この項目はデジタル化全般についての記述で、生成AIに限った話ではありません)。IPAの『AI利用者のためのセキュリティ豆知識』は、公式に社内研修等にも使えるようスライド形式になっていると説明されており、想定読者もAIにもセキュリティにも詳しくない利用者とマネージャです。教材を自作せずに済む、数少ない公的資料です。
まとめると:横に広げる前に、1業務で結果を出してください。結果が出ていない状態で全社に配ると、使われない仕組みが全社に配られるだけです。
決める人と、止める人|小さい会社での担当の置き方
競合記事の多くは「推進役を決めましょう」で終わります。ここではもう少し具体的に、3つの役割として書きます。根拠は、前述した公式の準備事項4つのうち、3つが体制の話だからです。
| 役割 | やること | 当サイトが対応づけた準備事項 |
|---|---|---|
| 決める人(経営者・役員) | やる・やらないを決める。予算を出す。1業務を承認する | ルールの策定・運用 |
| 試す人(対象業務の担当者1人) | 実際に使う。うまくいかない箇所を記録する | 組織内の利用状況を把握する仕組み |
| 止める人(相談・報告の受け先) | 迷ったときの相談を受ける。事故が起きたときの報告を受ける | リスク評価体制/インシデント報告体制 |
※この3つの役割への割り当ては、当サイトの整理です。公式が挙げているのは準備事項4つだけで、誰がどれを担当するかは定めていません。右の列は「この役割を置くと、公式のどの準備事項が前に進むか」という当サイトの対応づけです。
3人必要という意味ではありません。5人の会社なら、決める人と止める人が同一でもかまいません。公式も「既存の体制があれば、必ずしもAI活用のために体制を新規に構築する必要はありません」と書いています。すでに情報の取り扱いを相談する先があるなら、そこにAIの相談も足せばよい、というのが公式の考え方です。
ただし、決める人を空席にしないでください。総務省『令和8年版 情報通信白書』では、生成AI活用の戦略・方針について、中小企業で最も多かった回答は「経営幹部から各部署に対して実施事項や達成目標が提示されている」で32.9%でした(2025年度調査・日本の企業 n=515のうち中小企業162)。ただしこの設問は、「利用を禁止している」「組織的な取組はない」「わからない」と答えた対象を除いた後の回答者が母数です。除いた後の実際の回答数は、白書に記載がありません。白書の本文はこれについて、次のように書いています。
中小企業におけるAI活用については、トップダウンの関与がキーポイントとなっていることがうかがえる
中小企業庁『2026年版 中小企業白書 概要』でも、AI(生成AIを含む広義のAI)を活用しない理由の2位は「活用を推進する人材が不足している」で40.0%でした(帝国データバンク調査・調査時点2025年11月から12月・n=3,888・上位5つのみ表示・複数回答)。人材が足りないから始められない、という会社ほど、まず決める人だけでも決めておく価値があります。
まとめると:専任は要りません。兼任でよいので、名前を3つの役割に当てはめて紙に書いてください。書けない役割があるなら、それが今の弱点です。
費用|5人の会社で1年間いくらか
「月額数千円から」という書き方をよく見かけますが、それでは予算を組めません。ここでは公式ページに表示されている実額と、そこから計算した年額を出します。掛け算の過程も書きますので、自社の人数に置き換えてください。
| 選択肢 | 公式表示(1ユーザーあたり月額) | 5人・12か月の計算 | 年額 |
|---|---|---|---|
| 無料のまま試す | 0円 | —— | 0円 |
| ChatGPT ビジネス(年額課金・2名以上) | ¥3,050 | 3,050×5×12 | 183,000円 |
| ChatGPT ビジネス(月額課金) | ¥3,850 | 3,850×5×12 | 231,000円 |
| ChatGPT エンタープライズ | カスタム価格設定 | —— | 営業へ問い合わせ |
| Google Workspace Business Starter | ¥800 | 800×5×12 | 48,000円 |
| Google Workspace Business Standard | ¥1,600 | 1,600×5×12 | 96,000円 |
| Google Workspace Business Plus | ¥2,500 | 2,500×5×12 | 150,000円 |
この表を使うときの注意(4点)
- ChatGPT・Google Workspace とも、税込か税抜かの記載が公式ページに見当たりませんでした。確かめ方は2つで違います。Google Workspace の料金ページは「税」の1語でページ全文を検索して0件。ChatGPT の料金ページは、ブラウザで実際に表示して読み取り、税に関する記載が見当たりませんでした(全文検索はしていません)。実際の請求額は決済画面で確認してください。
- 年額は当サイトが公式の月額表示から単純に掛け算したものです。公式が年額として表示している金額ではありません。
- Google Workspace の料金ページには、確認日時点で期間限定の割引表示がありました。上の表は割引前の通常価格です。
- Microsoft 365 Copilot の料金は、当サイトでは確認できていません。比較対象に入れていないのはそのためです。
参考までに、費用が導入をどれくらい止めているかの数字もあります。中小企業庁『2026年版 中小企業白書 概要』で、AI(生成AIを含む広義のAI)を活用しない理由の5位は「必要な予算を確保できない」で13.8%でした(帝国データバンク調査・調査時点2025年11月から12月・n=3,888・上位5つのみ表示・複数回答)。上位5つの中では最も低い割合です。1位の「活用する業務がイメージできていない」(63.4%)とは4.6倍の開きがあります。
人数が少ない会社ほど知っておきたい、公式の条件
公式ページから読み取れた条件のうち、少人数の会社に効くものを挙げます。
- ChatGPT の企業向けプランは、2名から契約できます。公式は「Go、無料版、Plus の各プランは、個人向けに設計されています。Business と Enterprise は企業向けプランです。企業向けプランは、ユーザー2名からご利用いただけます。」と書いています。分かれ目は「無料か有料か」ではなく「個人向けか企業向けか」です。
- この公式の一文に Pro は出てきません。当サイトが2026年8月6日に確認した別の公式ページでは、入力が学習に使われない「法人向け製品」の列挙に Pro は含まれていませんでした。ただしプラン名ごとの区分を明記した公式の記述は見つけていないため、当サイトは Pro の扱いを断定しません。「有料である」ことと「企業向けである」ことは別だ、という点だけ押さえてください。
- Google Workspace は月単位の請求で、Starter・Standard・Plus は最大300人まで。各プランに14日間無料の表示があります。
- Google Workspace のプラン別機能欄によると、Gemini の入り方はプランで異なります。Starter は Gmail のアシスタント、Standard は Gmail・Google ドキュメント・Google Meet などのアシスタントと記載されています。ただしGemini単体の追加料金の有無は、当サイトでは確認できていません。
- 非営利団体については、公式にChatGPT Business または ChatGPT Enterprise を最大75%割引で利用できるという記載があります。
法人プランに移ると、代わりに失うもの
費用の話だけで終わらせません。法人プランには、費用以外の代償があります。
OpenAIの公式説明によると、法人向け製品では入力や出力が既定でモデルの学習に使われません。一方で同じ公式の説明に、次の記述があります(当サイトが2026年8月6日に確認)。
ワークスペース管理者はワークスペースを管理でき、ワークスペース内のエンドユーザーの会話履歴を閲覧、エクスポート、削除できます。
つまり、AIの提供元に学習されるリスクは下がりますが、代わりに勤務先が会話を見られるようになります。従業員に配る前に、この点を伝えるかどうかを決めておいてください。伝えずに導入すると、後から不信につながります。詳しい扱いは社内資料をChatGPTに読ませていいかの判定フローで扱っています。
まとめると:5人の会社なら、年4万8千円(Google Workspace Business Starter)から18万3千円(ChatGPT ビジネスの年額課金)が実額の目安です。上位プランや月額課金を選ぶと、上の表のとおり年9万6千円から23万1千円になります。金額よりも、法人プランに移ると管理者が会話を見られるようになるという点のほうが、社内で先に合意しておくべきことです。
補助金|名前が「デジタル化・AI導入補助金」に変わっています
もし「IT導入補助金」という名前で調べていたら、情報が古い可能性があります。中小企業庁は2026年3月10日に、次のように発表しています。
令和7年度補正予算事業から、「デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)」と名称を変更しました
中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、デジタル化やDX等に向けたAIを含むITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援します。
公募要領(通常枠・全52ページ)にも、対象の定義として次の一文があります。
ITツールとは、本事業においてIT導入支援事業者が提供し、かつ事務局に登録された中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上に資するソフトウェア(AIを含む。以下同じ。)・オプション・役務・ハードウェアの総称を指す。
| 項目 | 内容(通常枠) |
|---|---|
| 補助率 | 1/2以内(一定の賃金要件を満たす場合は2/3以内) |
| 補助額 | 1プロセス以上:5万円以上150万円未満/4プロセス以上:150万円以上450万円以下 |
| 補助対象経費 | ソフトウェア購入費、クラウド利用費(最大2年分)、導入関連費(導入設定・研修・保守サポート等) |
| 申請の前提 | 事務局に登録されたIT導入支援事業者とパートナーシップを組んで申請することが必要(複数者連携枠を除く) |
| ITツールの要件 | 業務プロセスを1種類以上保有するソフトウェアであること。汎用プロセスのみは不可 |
補助金について、この記事が書かないこと
- 「ChatGPT や Gemini の利用料に補助金が使える」とは書きません。公募要領が対象としているのは事務局に登録されたITツールです。個々のサービスが登録済みかどうかは、事務局のITツール検索で確認する必要があり、当サイトは確認していません。
- 「生成AI専用の補助金」ではありません。公募要領を「生成AI」「生成 AI」「生成」「AI」「AI」の5通りで検索したところ、「生成AI」は0件。全角の「AI」が27件で、そこに上記の定義が含まれていました。正確にはAIを含むITツールの導入を支援する補助金です。
- 締切は年度内に複数回あり、この記事の公開後に過ぎます。確認日時点では4次締切が2026年8月25日17時でしたが、最新の締切は必ず事務局サイトの事業スケジュールで確認してください。
- 補助率の2/3は、一定期間の賃金に関する条件を満たす場合に限られます。「2/3もらえる」と単独では考えないでください。
なお、対象になる「中小企業・小規模事業者」の範囲は業種で異なります。公式ページの表の全8区分を、そのまま挙げます。
| 業種 | 資本金 | 常時使用する従業員 |
|---|---|---|
| 製造業(ゴム製品製造業を除く)、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
| ゴム製品製造業(一部を除く) | 3億円 | 900人 |
| 卸売業 | 1億円 | 100人 |
| サービス業(ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
| 小売業 | 5,000万円 | 50人 |
| ソフトウェア業または情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
| 旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
| その他の業種 | 3億円 | 300人 |
公式には「資本金・従業員規模の一方が、上記以下の場合対象(個人事業を含む)」と書かれています。両方を満たす必要はありません。
効果をどう測るか|測れないものを測ろうとしない
総務省『令和8年版 情報通信白書』では、生成AI活用による影響として日本企業が最も多く挙げたのは「作業時間の短縮などによる業務の効率化」で61.6%でした。2位は製品・サービスの質の向上(32.2%)、3位は人員不足の解消(26.8%)です(2025年度調査・日本の企業 n=515。うち大企業353・中小企業162)。期待されているのは、まず時間です。
※このn=515は調査全体の有効回答数です。白書は設問ごとに回答対象を絞っており、設問ごとの実際の回答数は白書に記載がありません(当サイトが付注と図表の注記の双方を確認した結果)。
ただし、当サイトは「この作業が◯分から◯分になります」とは書きません。あなたの会社の業務量も、担当者の慣れも、求める品質も分からないからです。他社の削減率をそのまま自社の目標にすると、達成できなかったときに「AIは使えない」という誤った結論になります。
代わりに、自社で測る方法を渡します。1業務・1人・4週間で足ります。
| 測るもの | 記録の仕方 | なぜこれか |
|---|---|---|
| 着手から完成までの時刻 | 始めた時刻と終わった時刻を紙に書く。開始前の4回分と、開始後の4回分 | 体感ではなく差分で判断できる。ストップウォッチは要らない |
| 人が直した箇所の数 | 出てきた文章を直した回数を数える | 直す回数が減らないなら、時間は減っていない |
| やめた作業の数 | この4週間でやらなくなった作業を書き出す | 時間より確実に残る成果。次の業務を選ぶ材料になる |
逆に、最初は測らなくてよいもの
- 全社の生産性。1業務しか変えていないので、数字が動きません。
- 削減できた人件費。時間が浮いても人は減りません。浮いた時間で何をしたかのほうが重要です。
- 利用回数。使われた回数と成果は別です。回数を目標にすると、使うこと自体が目的になります。
まとめると:測るのは1業務・1人・4週間です。ここで差が出なければ、その業務は向いていなかったというだけで、生成AIが使えないという結論にはなりません。別の業務に移してください。
今は見送ってよい会社の条件|先にやることがある場合
ここがこの記事でいちばん書きたかった部分です。当サイトが2026年8月16日に開いた競合13本のうち、「今は導入しないほうがよい」という結論を示した記事は0本でした。13本すべてが事業会社の自社メディアで、自社のサービスや相談窓口への誘導が0回の記事もありませんでした(最少2回、最多13回)。
ひとつ範囲を正直に申し上げます。この0本という数字は、当サイトが同日に開いた13本の中での話です。13本のうち12本は本文の要約を読んだもので、生のHTMLを1文字ずつ確認したわけではありません。世の中に1本も無いという意味ではありません。
そのうえで、下の条件に当てはまる場合、生成AIの導入は今でなくてかまいません。先にやることのほうが、効果が大きいからです。

| 当てはまる条件 | 先にやること | そう言える根拠 |
|---|---|---|
| やる・やらないを決める人が社内にいない | 決める人を1人決める。それだけで次に進める | 中小企業では「経営幹部から実施事項や達成目標が提示されている」が最多回答(32.9%・情報通信白書・日本の企業n=515のうち中小企業162。ただしこの設問は「利用を禁止している」「組織的な取組はない」「わからない」の回答を除いた後が母数で、実数の記載なし)。白書本文もトップダウンの関与がキーポイントとしている |
| どの業務に使うか、1つも挙がらない | 1日の作業を書き出すところから。導入の検討はその後 | AI(生成AIを含む広義のAI)を活用していない理由の1位が「活用する業務がイメージできていない」で63.4%(中小企業白書・n=3,888・上位5つのみ表示・複数回答) |
| 社外に出してはいけない情報が、社内で決まっていない | 何が自社の秘密かを先に決める | IPAの対策1番目が「クラウドAIに営業秘密は教えない」。何が営業秘密かが決まっていなければ、この対策は実行できない |
| 誰が何を入力しているか、聞いて回る手立てがない | まず現状を聞く。仕組みは後でよい | 公式の準備事項の1つ目が「組織内のAI開発・提供・利用の状況を把握する仕組み」 |
| 困ったとき・事故が起きたときの報告先が決まっていない | 既存の相談先にAIの相談も足す | 公式の準備事項に「リスク評価体制の構築」「インシデント報告体制の構築」があり、同資料は既存の体制があれば新規構築は不要としている |
| 4週間、1人が試す時間を空けられない | 時間が空くまで待つ。契約だけ先に進めない | 当サイトの整理。この記事の効果測定は「1業務・1人・4週間」を単位にしているため、その時間が取れないと、導入がうまくいったかどうかを判断できないまま契約だけが残る |
※6つの条件そのものは、当サイトの整理です。公的資料に「この条件なら見送るべき」と書かれているわけではありません。右の列は、その条件を挙げた根拠にあたる資料です。中小企業白書の数字はいずれも「AI(生成AIを含む広義のAI)」についての回答で、生成AIだけの数字ではありません(前掲の注意ボックス)。
この表は「あなたの会社にはまだ早い」という意味ではありません。どの条件も、生成AIとは関係なく片づけておいたほうがよいことばかりです。片づけば、そのまま導入の準備が終わっています。
まとめると:見送るというのは、諦めるという意味ではありません。順番を入れ替えるだけです。上の表の「先にやること」は、どれも費用がかかりません。
うまくいかないときに、まず疑うところ
始めたあとで手が止まったとき、原因はだいたい次のどれかです。
| 症状 | まず疑うところ | 次の一手 |
|---|---|---|
| 契約したが誰も使っていない | 使う業務が決まらないまま契約した | ステップ1に戻る。業務を1つに絞り直す |
| 使ってはいるが成果が分からない | 測るものを決めていない | 1業務・1人・4週間で時刻と直した回数を記録する |
| 担当者だけが使い、広がらない | 教える場を作っていない | 中小企業白書は研修や勉強会の実施と部門間連携が有効としている。IPAの資料は公式にスライド形式で社内研修に使えるとされている |
| 社員が怖がって使わない | 入れてよい情報の線が示されていない | ステップ3に戻る。入れてはいけないものを紙1枚で示す |
| 期待した精度が出ない | 手元の資料をAIが参照できていない | 社内の資料をAIが参照できる形にするところから見直す(下の補足を参照) |
最後の行について補足します。総務省『令和8年版 情報通信白書』によると、「生成AIに社内データを学習させたり、生成AIが参照可能なデータベースを構築したりしている」企業は、日本が24.5%。米国57.2%・ドイツ54.4%・中国73.0%と比べて低い水準です(2025年度調査・日本の企業 n=515。ただしこの設問は「利用を禁止している」「組織的な取組はない」「わからない」の回答を除いた後が母数で、除いた後の実数は白書に記載がありません)。
※ここでの57.2%は米国企業の割合です。この記事の前半(ステップ1)に出てくる57.2%は中小企業白書の製造・生産管理・物流部門の割合で、別の調査の別の数字です。
同白書は、日本と他の3か国の違いについて次のように書いています。
日本では、生成AIが業務効率化の文脈で捉えられている一方で、他の3か国では、もう一歩踏み込み、製品・サービスの質の向上や生産性向上といった文脈で捉えられている可能性がある。
よくある質問
生成AIを会社で使うのに、法律で義務づけられた手続きはありますか
当サイトが読んだ範囲では、届出などの手続きを義務づけた記述は見つかりませんでした。探した範囲は、この記事の冒頭「この記事の根拠」の表に挙げた資料と、個人情報保護委員会の掲載ページです(AI事業者ガイドライン本編42ページ、活用の手引き39ページ、チェックリスト2ページ、公募要領52ページ、情報通信白書とその付注、中小企業白書 概要51ページ、IPAの2資料)。法令データベースを使った網羅的な調査は行っていません。「制度として存在しない」と断定できる調査ではない、という限界つきでお読みください。
AI事業者ガイドラインについては、公式の手引きが「AI事業者ガイドラインは義務を課すものではなく」と自ら明記しています。ただしこれは「何をしてもよい」という意味ではありません。個人情報を扱う場合は個人情報保護法が、社外に出せない情報を扱う場合は自社の秘密管理の実務が、従来どおり働きます。個人情報保護委員会は「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」を公表しており、2026年8月16日時点でも掲載が続いていることを確認しました。
※この文書が個人情報取扱事業者・行政機関等・一般の利用者の3つに分けて書かれているという点は、当サイトが2026年8月6日に確認した記録によります。2026年8月16日には、委員会のページで文書の掲載が続いていることだけを確認し、PDF本文は開き直していません。
ガイドラインを守らないと罰則がありますか
公式は罰則について書いていません。前述のとおり、公式が説明しているのは「AIのリスクを正しく認識し、自主的に対策を講じるための考え方を示しているもの」というところまでです。逆に「守らなくてよい」とも公式は書いていません。当サイトは、公式が書いた範囲を超えて「違法になる」とも「無視してよい」とも書きません。
社員5人ですが、法人プランでないとだめですか
だめということはありません。ただし個人向けのプランでは、入力した内容がモデルの学習に使われることがあるとOpenAIの公式説明にあります(当サイトが2026年8月6日に確認)。法人向けは既定で学習に使われないとされる一方、管理者が従業員の会話履歴を閲覧・エクスポート・削除できるという記載もあります。「学習されたくない」と「社内で見られたくない」は同時には満たせません。どちらを優先するかを決める話です。なお、ChatGPT の企業向けプランは公式に2名から利用できると書かれているため、人数の少なさは契約の障害になりません。
補助金で生成AIの月額料金を払えますか
当サイトでは断定できません。公募要領が対象としているのは事務局に登録されたITツールで、そこには「ソフトウェア(AIを含む。以下同じ。)」と書かれています。クラウド利用料は最大2年分が対象です。ただし個々のサービスが登録済みかどうかは事務局のITツール検索で確認する必要があり、当サイトは確認していません。また申請には、登録されたIT導入支援事業者とパートナーシップを組むことが必要です。
何人の会社から、専任の担当を置くべきですか
人数の基準は、当サイトが読んだ公的資料の中には書かれていませんでした。書かれていたのは「自社の事業規模および状況等に合わせて過不足なく対応いただくことが重要です」という考え方と、「既存の体制があれば、必ずしもAI活用のために体制を新規に構築する必要はありません」という一文です。専任かどうかより、決める人・試す人・止める人の3つの役割に名前が入っているかを確認してください。兼任でかまいません。
まとめ|今日やる1つ
- 国は生成AI導入の手順を段階として定めていません。公式が挙げているのは体制の準備事項4つで、順序は事業者ごとに変わり得るため並行して対応してよい、と明記されています。
- 導入の第1歩は業務の棚卸しではなく、現状の把握です。生成AIの利用を禁止していると答えた中小企業は1.2%、「方針を明確に定めていない」中小企業は31.5%でした(総務省『令和8年版 情報通信白書』2025年度調査・日本の中小企業 n=162)。禁止も許可もしていない、方針が決まっていない状態から始まります。
- 順番は4つで足ります。業務を1つに絞る、手元の環境で試す、最低限のルールを決める、効果を確かめて横に広げる。各段階で決めるのは1つか2つだけです。
- 5人の会社の実額は、年4万8千円から18万3千円です(Google Workspace Business Starter と ChatGPT ビジネスの年額課金の場合。公式表示の月額から当サイトが計算・2026年8月16日確認・税の記載は見当たらず)。上位プランや月額課金なら年9万6千円から23万1千円です。金額より先に、法人プランでは管理者が会話を見られることを社内で共有してください。
- 今は見送ってよい会社があります。決める人がいない、業務が1つも挙がらない、社外に出せない情報が決まっていない——このどれかに当てはまるなら、それを先に片づけるほうが早く進みます。費用はかかりません。
今日やる1つを挙げるなら、社内で3人に聞くことです。「いま生成AIを使っていますか。何に使っていますか。どこに文章を貼り付けていますか」。この3つの答えが集まれば、ステップ0は終わりです。そこから先は、この記事の順番どおりに進められます。
出典
下の16件は、すべて2026年8月16日に当サイトが実際に開いて確認しました。次の2点だけは、2026年8月6日に確認した当サイトの記録によります:①ChatGPTの個人向け/法人向けプランにおけるデータの扱い(個人向けでは入力が学習に使われることがある点、法人向けでは既定で学習に使わない設定、法人向けで管理者が会話履歴を閲覧・エクスポート・削除できる点)②個人情報保護委員会の注意喚起が3つの読み手に分けて書かれていること。
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編」(PDF・全42ページ)
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン活用の手引き(案)」(PDF・全39ページ)
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)チェックリスト(別添7)」(PDF・全2ページ)
- 総務省「AI事業者ガイドライン」掲載ページ(版の一覧・別添8の更新状況)
- 総務省「令和8年版 情報通信白書」第Ⅰ部第2章第1節 企業におけるAI利用の現状(PDF)
- 総務省「令和8年版 情報通信白書」付注(調査方法・調査期間・対象・有効回答数)(PDF)
- 中小企業庁「2026年版 中小企業白書 概要」(2026年4月24日閣議決定・PDF・全51ページ)
- 中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)」への名称変更(2026年3月10日)
- デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠(補助率・補助額・対象経費)
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)(PDF・全52ページ)
- デジタル化・AI導入補助金2026 中小企業・小規模事業者の定義
- IPA「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」(公開日2026年4月2日)
- IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」
- OpenAI「ChatGPT の料金プラン」
- Google「Google Workspace の料金プラン」


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